ダニが媒介する病気
数週間前のTVで、
人がダニに咬まれたことによって死亡したとの報道がありました。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS : Severe fever with thrombocytopenia syudrome)
と呼ばれるダニ媒介性感染症によるもので、
2009年に中国中央部で集団発生し、
2011年に原因となるSFTSウイルスの存在が確認されました。
現在分かっていることは、下記の通りです。
■ 疾病名 ; 重症熱性血小板減少症候群
■ 病原体 ; SFTSウイルス (ブニヤウイルス科フレボウイルス属)
■ 感染経路 ; フタトゲチマダニ等のマダニによる咬傷、感染患者の血液・体液との接触感染
■ 症 状 ; 発熱、倦怠感、食欲低下、消化器症状(下痢・黒色便)、リンパ節腫脹、出血症状
潜伏期間は6日~2週間、致死率は約10~30%
■ 治 療 ; 特異的な治療法はなく、対症療法が主体。有効な抗ウイルス薬はない。
■ 予防法 ; 野外でダニに咬まれないようにする。
感染者との血液、体液、排泄物との直接接触を避ける
草むらや藪など、ダニが生息するような場所に入る場合は、
長袖の服や長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、
肌の露出を少なくすることが大事ですね。
そして、犬や猫を飼っているおうちでは、
犬猫のダニ予防が重要になってきます。
猫は犬に比べてダニの寄生は少ないように思いますが、
家の中と外を自由に出入りする仔は気を付けたほうがよいでしょう。
予防薬として、スポットタイプ(首の後ろに滴下する液体)と、
錠剤タイプ(飲ませるもの)、スプレータイプ(全身に吹き付ける)があります。
スポットタイプ(左側)と、錠剤タイプ(右側)
どちらも体重によって使用量が異なりますので、
使用する際には体重測定が必要になります。
スポットタイプに関しては、
ダニに対してより即効性があるものや、
ジェネリックが販売され始めるなど選択肢が増えました。
利点は、どうしてもお薬を飲まない仔に使えることですが、
欠点として、滴下してから乾くまでに時間がかかること、
誤って舐めてしまうと、薬の効果が減弱してしまい、
溶剤のアルコールによって涎(ヨダレ)が出るなどがあります。
ノミに対しては1~3ヶ月、ダニには1ヶ月の有効期間となります。
錠剤タイプのメリットは、
即効性が期待できる、薬剤が全身にくまなく分布する、
スポットタイプのように毛が濡れることがないことです。
小さなお子さんがいるお家では、
お子さんがスポット剤を滴下したところを触ってしまうことがありうるので、
錠剤タイプが良いかもしれません。
シャンプーを頻繁に行う仔にもこちらがお勧めです。
デメリットとして、
お薬を拒否する仔に飲ませることが難しいことと、
飲んだ直後に吐き戻してしまうと十分な効果が得られないため、
再度投薬が必要となることです。
ノミ・ダニ共に1ヶ月の有効期間となります。
もうひとつ、スプレータイプのものもありますが、
全身にスプレーする手間がかかること、
全身が濡れたようになり、アルコール臭もするので、
使用頻度は高くないのですが、
全身にびっしりノミやダニが寄生しているときには有効です。
今回問題となった重症熱性血小板減少症候群は、
このウイルスに感染した哺乳動物は見つかっているものの、
動物の発症は確認されていないそうです。
同じく、ダニが媒介する病気として、
犬においてはバベシア病という病気が重篤な症状を引き起こします。
ダニが吸血する際に唾液と一緒にバベシア原虫が体内に入り込み、
赤血球に寄生します(ダニ吸着から48時間で寄生)。
赤血球に寄生したバベシア原虫は増殖し、
赤血球を破壊するため貧血状態となります。
他に、発熱、食欲低下、血尿といった症状も見られます。
命に関わることも少なくありません。
抗菌剤や抗生剤でバベシアの増殖を抑え、
体力の回復を待つ治療法がありますが、
再発率が高いため、
やはりダニ寄生を予防することが大事です。
主にダニが多く生息する西日本で見られる病気ですが、
近年、東日本への感染拡大が確認されています。
この他にも、マダニが媒介する病気として、
ライム熱、Q熱、日本紅斑熱、野兎病などがあります。
これらの病気に感染した後に治療する治療費よりも、
ダニ予防薬で予防した方が遥かに安価ですし、
健康状態を悪化させることのない生活ができることから、
私たちは、ノミ・ダニに限らず、
フィラリア、狂犬病ワクチン、混合ワクチンなど、
予防を心掛けて頂くことを強くお勧めします。
予防に勝る治療なし!