カタツムリ
11月だというのに蒸し暑い陽気です。
当院の待ち合い室は陽当たりの良い南側のため気温が上がり、
エアコンでの室温調整が必要なほど。
衣替えのタイミングを完全に逸していますが、
急に寒くなる可能性もあるので要注意です。
さて先日、院内で、
ゆか先生から「来てきて」と呼ぶ声が。
「何なに」と声のした方へ行ってみると・・・。
;「ちっちゃいカタツムリ見つけた」
確かに小さい。
まだ子供なのでしょうか?
でも、すでに立派な殻を持っています。
;「ナメクジは触れないのに、カタツムリは触れるのよねぇ。」
確かにそうかも・・・。
カタツムリ(蝸牛)は、陸に住む巻貝の総称で、
陸貝のうち、殻のあるものがカタツムリ、
殻のないものがナメクジと呼ばれます。
ナメクジは陸貝の殻が退化しているものの総称で、
カタツムリから殻を失う方向へ進化したものだそうです。
貝殻が消失することを「ナメクジ化」と呼び、
なぜこのようなことが起こるのかは明確にはされていないそうですが、
殻がない方が運動が自由で、
狭い空間も利用できるメリットあると考えられています。
海に住むウミウシも、ナメクジのように進化した巻貝
。子供の頃は、カタツムリが殻を捨てるとナメクジになるのかと思っていました。
ヤドカリの発想ですね・・・。
カタツムリの殻は内臓の一部なので、
大きく破損したり、無理に取ったりとすると死んでしまうそうです。
大きさはどれくらいなのかな?と思い、
測ってみようと定規を探していると(この辺りが理系の発想)、
;「綿棒に乗せると大きさが分りやすいんじゃない?」
とのことで、乗せてみました。
お、殻の巻きが綺麗に撮れた。
と思ったのもつかの間、
触角をしまいこみ、縮こまっていくカタツムリ。
;「元気なくなってきたね・・・。」
と観察をしていたのですが・・・。
;「・・・・・・綿棒に体の水分を奪われているんじゃ」
急いで水をかけ、外に離してあげました。
ナメクジに塩をかけて退治しますが、
これは浸透圧によるものなので、
砂糖でも起こります。
死ぬ前に水をかけると形は復活しますが、
ダメージが大きいので後日死んでしまうのだとか。
このカタツムリは大丈夫だったのかな・・・。
ナメクジやカタツムリは植物を食い荒らすことがあるため、
駆除のために、花壇などに薬剤をまくことがありますが、
この駆除薬、物によっては、
誤って口にしてしまった犬や猫に、
激烈な中毒症状(嘔吐、痙攣などの神経症状)を起こすことがあります。
取り扱いには十分ご注意下さい。
また、カタツムリやナメクジは、
広東住血線虫(カントンジュウケツセンチュウ)という寄生虫を媒介する可能性があります。
これは、ヒト並びに動物にも害を及ぼす人獣共通感染症です。
広東住血線虫の成虫はネズミを終宿主とする寄生虫ですが、
ネズミの糞に幼虫が排出され、
これを食べたナメクジやアフリカマイマイが中間宿主となります。
沖縄在住時に、でっかいカタツムリを見つけ、
;「おぉでかっ 」
と、童心に戻り、アフリカマイマイと知らずに捕まえてみましたが、
勤務していた動物病院の先生やスタッフさんから厳重注意されるという、
痛い思い出が・・・。
カタツムリ、ナメクジを触った手を洗わずに食べ物を口にしたり、
カタツムリ、ナメクジが這った後の食品を洗わずに食べることによってヒトに感染します。
昔は、民間療法として、ある種類のナメクジを生きたまま丸飲みすると、
心臓や喉に良いとするものもあったのだとか・・・。
もちろん、感染の可能性があるので、
こういったことは避けるべきとされています。
ヒトの体内に入ってきた幼虫の多くは中枢神経へと移行、
好酸球性脳脊髄膜炎などを引き起こし、
頭痛、発熱、痙攣などの症状を呈して、
最悪の場合は死にいたることもあるそうです。
広東住血線虫は、熱帯・亜熱帯地方である、
台湾、タイ、インドネシアの東南アジアや太平洋諸島に分布しますが、
日本では沖縄、奄美大島、小笠原に生息するアフリカマイマイが
重要な中間宿主とされています。
しかし、日本各地の港湾におけるネズミ、ナメクジを調べると、
この寄生虫の寄生が確認されていることから、
本土は絶対に安心とは言い切れないようです。
感染することは稀な寄生虫ですが、
カタツムリ、ナメクジをパクッ
と食べてしまう仔は要注意ですね。