大敵
※注意
今回の内容は、グロテスクな内容が含まれております。
昆虫が苦手な方、お食事中の方は閲覧にお気を付け下さい
当院とお隣の庭に、イヌマキ(犬槇)の木と生垣があります。
イヌマキは、マキ科マキ属の常緑針葉高木で、
関東から四国・九州・沖縄、台湾など、
比較的暖かい地域に分布し、
庭木や防風林として良く利用されているそうです。
さらにこの木は抗蟻性が強く、
シロアリを寄せ付けないため、
沖縄では高級建築材として、住宅に使われていたそうです。
さて、今回のタイトル「大敵」は、この木に関連することです。
ある日の夕方、この生垣の表面に、
無数のモゾモゾと蠢く(うごめく)ものが・・・。
「あれ?なんだ?」と思い、近付いて見ると・・・。
この芋虫(写真は地面に落ちたもの)がビッシリ
おわっ
と思いつつ、よーく考えてみると、
思い当たる節がありました。
去年から良く見かけていたこの虫。
最初は蝶か蛾か分らなかったのですが、
調べてみると、蛾でした。
キオビエダシャク(黄帯枝尺)という名前の害虫で、
この幼虫が、先ほどの芋虫。
幼虫がイヌマキの葉(↓)を食べるのですが、
薄緑色の若葉を好んで食べるようです。
放っておくと、木が枯れてしまうのだとか。
幼虫の体表には少ないながらも棘のような体毛があり、
これが人に接触すると、皮膚のかぶれを引き起こします。
最初は火バサミで一匹ずつ取っていたのですが埒が明かず、
薬剤散布をすることにしました。
薬剤はトレボン乳剤、スプラサイド乳剤が有効とのこと。
今回使用したのはこちら、トレボン乳剤。
うちではJAさんから購入しましたが、
ホームセンターでも売っているそうです。
ホームセンターだと500mlで4,000~5,000円弱と、いいお値段。
これを1000倍希釈して散布します。
身長ほどの低い生垣ならジョウロで散布できますが、
身長より遥かに高い木には、噴霧器がないと厳しいです。
この薬で殺虫できるのは幼虫(芋虫)だけなので、
成虫の蛾は、虫取り網で捕獲するか、
蚊・蝿用のスプレー式殺虫剤が効果ありです。
うちでは噴射力の強いアー〇ジェットを愛用。
しかし、屋外で使用することになるので、
室内ほど効率的ではありません。
しかも頭が良く、葉っぱの表面に止まったかと思いきや、
器用にスルスルと葉っぱの裏へ移動し、姿を隠します。
( ↑ ; 葉の裏側から撮影)
そして、木の根元の地中に埋まっているのが蛹。
( ↑ ; 蛹 ) ( 拡 大 )
それほど深くない場所に埋まっているので、
イヌマキの根元の雑草を引き抜くとボロボロ出てきます。
しかもこの蛹、お尻の部分がグリングリン動くので余計に不気味。
先ほどの殺虫剤は、この蛹には無効なので、
見つけたら捕獲するしかありません。
この害虫は、ここ数年で南九州を中心に大繁殖し、
イヌマキに大きな被害が出ています。
元々はもっと南に生息していたらしいのですが、
温暖化の影響なのか、生息域を拡大したのだとか。
成虫も幼虫も、ハチと同じで黒と黄色の警告色を備え、
(警告色;あえて外敵に目立ちやすい色や模様を持つことで、
自身に手を出すと危険が及ぶぞと警告を発し、
自身の安全を確保するものと考えられている。
それらの多くは実際に毒を持っていたり、
不快な味や臭いの元となる化学物質を含んでいる。)
また、イヌマキに含まれるイヌマキラクトンやナギラクトンを体内に蓄積することで
外敵である鳥からの捕食を免れているため、
天敵が少ないことも大繁殖した要因の一つだそうです。
最近では、車で移動中でもイヌマキに目が止まるようになり、
幼虫が付いていないかチェックするようになってしまいました。
この戦いは、まだしばらく続きそうな様相です・・・。