血尿
血尿が出ているとの主訴で来院したミニチュア・ダックスフンド。
毎日出ているわけではなく、
出る日と出ない日があるとのこと。
小型犬や猫は下腹部に手を当てると、
尿が溜まっている膀胱がを触知できるのですが、
体重が7kgと肥満の仔で、
触診が困難だったため、
エコー検査で膀胱を確認したところ、
膀胱内に明らかに異常な物が映りました。
その仔のレントゲン画像がこちら。
お腹を左横から見た画像ですが、
一目瞭然な物が映っています。
レントゲンは硬い物(骨など)をより白く、
空気を黒く映します。
レントゲンに白く映るものを不透過性亢進と表現します。
ネジや乾電池などを飲み込んでしまった場合は
クッキリと白く写るのでとても分りやすいのですが、
ビニールやプラスチック、
布などは映らないため判別が難しくなります。
さて、先ほどのレントゲン画像ですが、
明らかな異常は…。
矢印の部分です。
下腹部に不透過性亢進物が存在しているのが明らかです。
バンザイをした状態で撮影した画像がこちら。
背骨(腰椎)や腰骨(腸骨)と被っているので
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、
ここ(矢印)にあります。
より分かりやすく拡大し、
陰影を調整したのがこちら。
楕円形の不透過性亢進した物があります。
膀胱内にあるレントゲン不透過性亢進する(=硬い)物、
といえば…。
この仔の膀胱にあったのは、
膀胱結石でした。
外科手術で膀胱切開し、
取り出したものがこちら。
レントゲンでは3つかと思っていましたが、
小さいものも3つ、合計6個ありました。
特徴的な形状をしているので予測はしていましたが、
念のために成分検査を依頼したところ、
ストラバイト(リン酸アンモニウム・マグネシウム)と呼ばれるものでした。
この結石は、膀胱内の尿がアルカリ性になると形成されます。
膀胱内に細菌感染が起こると尿がアルカリ性になるため、
結石が形成される要因となります。
また、日常的に摂取している食べ物や水に、
ミネラル成分(カルシウム、マグネシウムその他)が多く含まれていると
この結石が出来る確率が高くなります。
術後は血尿もなく症状は落ち着いたのですが、
元々ドッグフードを食べずに偏食するとのことでしたので、
食生活を改善できなければ、
今後も再発する可能性があります。
以前、まだ若いミニチュア・シュナウザーに大きな膀胱結石があり、
手術後に成分分析をしたところストラバイトでした。
日常生活の確認をしたところ、
その仔のご家族は良かれと思って、
ペットボトルで販売されているミネラルウォーターを与えていた、
とのことでした。
確か、「コントレックス」だったと記憶しています。
「コントレックス」は、
カルシウム、マグネシウムを多く含む硬水です。
この他にも、「エビアン」、「ヴィッテル」なども硬水のようです。
愛犬に与えるお水は、軟水の方が無難かと思われます。
うちで飼っている犬猫は水道水ですが…。