脂漏症
4月に体の匂いが臭いとの主訴で来院した、
7歳、避妊メスのシーズー、ももちゃん。
「私、臭うのかしら…。」の表情のももちゃん。
確かに独特の体臭がありました。
脱毛はしていないながらも、
腋の下や内股に皮膚の発赤がありました。
触れてみると、しっとり、
もしくはベタつくような感触です。
脂漏症という症状で、
シーズーやパグといった短頭種に起こりやすいようです。
他にも、アメリカン・コッカー・スパニエルや、
ダックスフンドといった、短頭種ではない犬にも起こります。
皮脂のバランス異常によって起こるものですが、
遺伝、代謝、環境(高温多湿)、食事(過剰な脂質や糖質)など、
あらゆる要因が関与していると考えられています。
そして、マラセチアという酵母様真菌(カビ)の増殖も大きな要因です。
皮膚の表面をセロテープでペタペタし、
染色液で染色し、顕微鏡で見てみると、
このような像が見えます。
赤矢印で示したものがマラセチアです。
雪だるま、ボーリングのピンといった形に例えられます。
マラセチアは人や動物の皮膚表面に常在する菌で、皮脂を好みます。
健康な皮膚では悪さはしないのですが、
皮脂の過剰な分泌、免疫力の低下、アトピー性皮膚炎の素因がある、
などによってマラセチアが増殖すると、
マラセチアによる皮膚炎が起こります。
バンザーイしてみると、
腋の下(画像は左側の腋の下)や、
お腹から内股にかけて皮膚炎を起こし、
皮膚が赤くなっています。
左腋の下の表面を先ほどと同様の手順で見てみると…。
うわー!マラセチアだらけ!
これは皮膚炎を起こすし、臭いもするだろうということで、
まずは基本的な皮膚のケアとして、
低刺激シャンプー(左側)でシャンプー後に、
保湿剤(右側)で皮膚の保湿を行います。
できれば週2回行ってもらうように指示。
トリミングサロンに持参してもらい、
トリミングの時にもこれを使用してもらうようお願いしました。
また、抗生剤と抗マラセチア薬を処方しました。
1週間後の再診の時は、
シャンプーをして3日ほどするとまた臭いがしてくる。
とのことだったので、シャンプーを追加しました。
まず低刺激シャンプーで洗った後に、
マラセブ(中央)というマラセチア対応用シャンプーで2回目を洗い、
そして保湿剤で保湿としました。
お薬は前回とお同じものを継続して処方しました。
この1週間後の再診時は、
臭いとベタつきが減ってきているとのことでした。
皮膚を見てみると、赤みが少し減ったようです。
マラセチアはまだ出ていますが、
前回より劇的に減りました。
抗生剤は休薬し、抗マラセチア薬のみ処方しました。
「なんか、いいみたい。」
心なしか、顔つきが明るくなったように思えます。
さらに1週間後。
まだ皮膚の赤みは残りますが、
マラセチアはさらに減ってきています。
「ふふふ。いい感じでしょ?」
と余裕の表情に見えます。
この後は、週に1回のシャンプーと、
抗マラセチア薬のみを約1ヶ月継続しました。
6/8に来院した際には、
かなりの改善が見られました。
左の腋の下はほとんど皮膚の発赤はなく、
内股も2ヶ月前よりは発赤が軽減しました。
ご家族が欠かさずシャンプーとお薬を継続してくれたお蔭です。
「どう!?もう臭いって言わせないわよ。」
ももちゃんもお薬を頑張って飲んでくれたからの改善だよね。
臭いと痒さがなくなって何よりでした。
良かったね!
しかし、油断は禁物。
これからが梅雨の本番、
マラセチアが好む湿度が高くなる時期です。
抗 マラセチア薬も休薬としましたが、
シャンプーは週に1回で継続してもらうようお伝えしました。
小型犬でも、自宅でシャンプーして乾かすとなると
1時間ほどはかかってしまいますから、一仕事です。
しかし、お薬を飲まずにシャンプーで維持できれば、
それに越したことはありません。
ここぞという時にだけお薬を使用し、
それ以外ではダラダラと飲み続けないようにした方が、
体にも、お財布にも優しいです。
今回ご紹介したシャンプーだけではなく、
その仔の体質にあったシャンプーを、
正しい方法で洗ってあげることが大事です。
シャンプー方法もいつか画像付きでアップしなければと思っています。