甲状腺からの皮膚病
6月中頃、7歳になる雑種犬(シーズー×チワワ)が、
背中と尾の脱毛を主訴に来院されました。
皮膚には黒い斑が出ているところも。
ご家族のお話によると、痒みの症状が見られないとのこと。
7歳という年齢から、犬においてはシニアであること、
黒い斑が出ていること(色素沈着)から、
甲状腺機能低下症を疑いました。
甲状腺とは喉のあたりにある臓器で、
ホルモン分泌を行っています。
甲状腺ホルモンは、
全身の細胞の基礎代謝の維持や促進に関わっているので、
甲状腺機能低下症によって甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、
活動性の低下(大人しくなる)や、皮膚症状などが見られます。
また、哀しそうな顔になるとも言われます。
この仔のお顔は…。
体毛が伸びているのでイマイチよく分かりませんが、
やはりどちらかというと、どんよりしてる?
犬で甲状腺機能低下症になる原因は、
甲状腺の炎症や萎縮が関係することが多く、
予防することが難しいため、
最近散歩に行きたがらない、寝てばかりいる、
皮膚がおかしくなってきた、
などの症状に気が付かれて来院されるケースがほとんどです。
甲状腺機能低下症であるかは、
血液検査(検査機関に発注)で甲状腺ホルモンの値を測定します。
この仔はやはり甲状腺ホルモンが低かったため、
甲状腺ホルモンのお薬を1日2回の投薬で開始しました。
2週間後の再診では大きな変化はなく、
この日も同じお薬を2週間処方。
2週間後、お薬だけ取りにいらしたのですが、
発毛してきているとのこと。
経過は悪くないようなので1ヶ月分処方したのですが、
9月末に連れていらしたところ…。
一瞬、別の仔かと思っちゃいました。
最初の写真がガックリうな垂れているのに対して、
ばっちりカメラ目線。
この辺りも、活動性が改善されたところかと思います。
脱毛が目立っていた背中と尾も綺麗に毛が生えていました。
しかし、甲状腺ホルモンのお薬は、
完全に切ってしまうと症状が再発する可能性があります。
症状が安定していれば、
通常1日2回飲ませるのを1日1回とか、
1日おきにとか、少しずつ減らせることはできるようです。
甲状腺機能低下症による脱毛や皮膚症状がある場所に
細菌などが2次感染を起こすと痒みがでてくるので、
抗生剤や痒み止めも必要になってきますが、
この仔は1種類のお薬だけで
ここまで綺麗になったのでビックリでした。
良かったね!