季節物


毎年5月半ばあたりから、

トウモロコシを店頭でよく見かけるようになります。

焼いて良し、茹でて良し、

BBQでも彩りとして欠かせない作物ですが、

トウモロコシが出回るこの時期に、

我々獣医師が頻繁に遭遇する、

あるある症例が来院しました。

ご家族の承諾を得られましたので、

今回は学会風に発表(紹介)させて頂きます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

症例は5才の雑種犬(スコッチテリア × T.プードル)、

去勢オス、体重7.36kgのKちゃん。

5/12の午後7:30頃に電話があり、

トウモロコシの芯を飲み込んでしまったとのこと。

連絡から10分以内に来院され、

催吐処置を行うも吐き気を催さなかったため、

自宅にて経過観察とする。

翌日5/13の午前9:15頃に電話があり、

グッタリしているとのこと。

来院してもらったところ、

自力で起き上がることは可能な状態。

レントゲン撮影を行ったところ、

ラテラル像(横向き)にて、

上腹部に消化管と思われる不整な陰影(矢印で囲んだ部分)あり。

 IMG_0922

VD像(バンザイ状態)では異物らしき陰影はなし。

IMG_0921

今回はご家族が飲み込んだのを確実に把握しているため、

バリウムでの造影検査(異物が消化管内にあるかのチェック)は行わず。

血液検査にて著変は認められなかったため、

即時に外科手術を行った。

全身麻酔下にて常法通り皮膚並びに腹壁を切開して開腹、

胃を触ってみたところ、

トウモロコシの芯らしき異物を確認。

胃壁と粘膜を切開して異物を摘出。

ご家族の証言通り、

約4.0cm × 3.0cmのトウモロコシの芯であった。

IMG_0860

胃の粘膜面、漿膜面を4-0吸収糸にて縫合、

念のために消化管を腹腔外に出して他に異物や塞栓部位がないかを確認。

他の部位に異常は認められなかったため、

閉腹して終了した。

麻酔からの覚醒も良好で、

翌日から自立や吠えるなどの元気が出てくる。

胃切開を行ったため、2日間の絶食、

抗生剤、消炎剤、点滴等の治療を行いながら入院管理。

術後3日目からの流動食への食いつきも良かったため、

5日目で退院とした。

退院から1週間後に再診のため来院、

元気食欲良好とのこと。

手術部位の抜糸を行い、今回の治療を終了とした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

という流れとなりました。

トウモロコシの芯を誤食するのは割と頻繁に起こります。

BBQで、1本を1/4にカットして人が食べた後、

皿に置いていたものをいつの間にか食べていた、

炭と一緒に地面に捨てたものを拾って食べたなど。

今回もそう言ったことかと思っていたのですが、

ご家族にお話を聞いたところ、

ちょっと異なるパターンでした。

自宅にて、

ご家族でトウモロコシを切らない状態で1本のまま食べていて、

Kちゃんが近くにいて興味がありそうな目で見ていたため、

冗談で、ほら、と食べかけのトウモロコシを見せたところ、

瞬間的に、真ん中にガブッ!と食いつかれた。

ご家族曰く、

あんなに首が伸びてくるとは思わなかった…。

とのこと。

トウモロコシの真ん中に食いついたKちゃん、

口の両端に出ている部分のトウモロコシをつかむご家族。

きっと、ご家族は必死だったと思うのですが、

持って行かれたらまずい!

と思ったはずです。

Kちゃん;クレルッテイッタヤン(๑`н´๑)!

ご家族;いやいやちょっと待って!o=(;゚ロ゚)=o!

真ん中を咥えて離さないKちゃん。

取られまいとトウモロコシの両端を必死につかむご家族。

硬直した時間も数秒だったのか、数分だったのか、

想像の域を出ませんが、

この後、この膠着状態に動きがみられます。

人の奥歯は食べ物を磨り潰すようにするため、

臼(うす)の形状になっている臼歯(きゅうし)ですが、

犬の歯は獲物の肉を引き裂くための裂肉歯(れつにくし)で、

尖っています。

この尖った歯でトウモロコシの芯を咥え続けるとどうなるか…。

そして、取られまいと両端を引っ張り続けるとどうなるか…。

犬の裂肉歯がトウモロコシの芯に徐々に食い込んでいき…。

そして…。

ボリッ!

Kちゃん;キラリーン!!( ✧Д✧)!!

ご家族;!!!折れたーーー!!!ヾ(;゚;Д;゚;)ノ゙ーーー!!!!

そう、ご家族が掴んでいたトウモロコシの両端が折れ、

Kちゃんが咥えていた部分はKちゃんの口に残ったまま…。

圧倒的有利な展開に持ち込めたKちゃん。

必死にKちゃんの口に手を入れて飲み込まれまいとするご家族。

大抵の場合、

犬が口に咥えたものを人が力で取ろうとすると、

逆に慌てて呑み込む犬。

こういった時に、”待て”の躾が出来ている仔は、

”待て”の指示の後に、

他の興味があるもの(おやつやおもちゃ)と”交換”ができれば、

咥えているものを離して、

ご褒美として見せたものを与える。

という選択肢を取れるために役に立つのですが、

そうはいってもやはりご家族は慌てますよね。

体重でいうと中型犬ほどのKちゃんの咥える力ですから、

人の力では取り返すことは難しいと思います。

Kちゃん;ごっくん。(´∀`)♡ゴチソウサマデシタ。

ご家族;飲んじゃった…(ノд`;)…。

かくして入院・手術と相成りました。

(上記はあくまでもご家族から伺ったお話からの妄想です)

よく食道を通過したものだと感心(?)してしまいました。

てっきりカットしてあった芯を飲み込んだのだと思っていたので、

Kちゃんとご家族の間に、

手に汗(芯?)握る攻防があったとは知る由もなく、

手術後にご家族から事の顛末をお聞きした時は、

不謹慎ながら笑ってしまいました。

軍手や靴下などの布製品や、

マンゴーや桃の種、

皮のベルトやグローブなども

犬が飲み込むことが多いものですが、

吐いたり、便に排泄されるなどして、

自然と排出されることもあるのですが、

トウモロコシの芯はよほど噛み砕いていない限り、

大型犬でも自然には出てこないと思われます。

Kちゃんの術後入院中、

ご家族が面会時に、

「もう家では二度とトウモロコシは食べない。」

とのつぶやき。

いやいや、そこまでしなくても良いのでは…。

と思いましたが、

ご家族はトウモロコシを見るたびに、

今回の件を思い出されるのだろうなと思った次第でした。

なんにせよ、元気に退院できて何よりでした。

これからの季節、

BBQ時のトウモロコシやタマネギ(ネギ中毒)には

くれぐれもご注意下さい!

コメントを残す

CAPTCHA