対岸の火事


以前、勤務していた頃、

まとまったお休みを頂いて、

フランスへ旅行airplaneしたことがあります。

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ルーブル美術館や、

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世界遺産のモン・サン・ミッシェルなどを観て回りました。

旅の最終日、

昼頃までにシャルル・ド・ゴール空港に着けばよかったので、

午前中に近場で行けるところはないかと探したところ、

宿泊場所のモンパルナスから徒歩圏内に、

パスツール研究所があるのを地図で発見eye

パスツール研究所とは、

パリにある生物学・医学研究を行う非営利民間研究機関。

フランスの生化学・細菌学者であり、

近代細菌学の開祖とされるルイ・パスツール(1822~1895)は、

狂犬病ワクチンを開発し、

1887年にこの施設を開設しました。

普通は観光客が行くような所ではないのですが、

学生の頃、獣医微生物学の教科書に、

ここにある「犬と闘う少年の像」が載っていました。

狂犬病は犬だけの病気ではなく、

人畜共通感染症で、

人を含めたすべての哺乳類が感染します。

ウイルスに感染した動物の唾液内にウイルスが含まれ、

咬まれることによって感染が成立。

神経系を介して日に数mm単位で脳へ進む。

(足を咬まれるより、顔を咬まれる方が発症が早い。)

感染急性期には、神経が過敏に反応し、

水や風を恐れるようになり(恐水症、恐風症)、

麻痺、錯乱、昏睡に至り、呼吸障害によって死亡。

ワクチン接種を受けずに感染した場合、

致死率はほぼ100%(99.99%)。

致死率の高いこの病気をなんとか食い止めようとした訳です。

狂犬病ワクチンの開発こそ、

獣医微生物学発展の礎であったといえます。

その像を目にすることができるhappy02sign01

と思って、地図を頼りにパスツール研究所に到着good

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が、しかし…。

写真右手にある詰所に、

ガードマンが数人待機中。

ここを通る職員らしき人達は、

皆さん首から身分証らしきものを下げている。

もしかして、入れないshocksign02

ガードマンに拙い(つたない)英語で、

「入ったらダメwink?」

と聞いたところ、

即答で拒否crying

飛行機の時間がなければ食い下がるのでしたが、

ここは諦めることに。

でも、あとでこの写真を拡大してよく見ると…。

犬と戦う少年の像

「犬と闘う少年の像」らしきものがsign01

ここにあるとわかっていたら、

そこにある像を撮らせてcamerasign01

と食い下がったのに…。

無念ですheart03

さて、今回この話題にしたのは、

狂犬病がすぐ近くまで迫っているとのニュースを見たからです。

今年の7月、台湾で、

野生のイタチアナグマ3頭の死体から、

狂犬病感染が確認されました。

台湾では52年ぶりの発生で、

遺伝子調査により、

この狂犬病ウイルスは中国大陸より持ち込まれたことが確定。

この事態によって、

ペットショップの8割が開店休業、

”狂犬病パニック”状態となっているそうです。

世界においても清浄国は僅か11ヶ国と非常に少なく、

イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、

アイスランド、アイルランドetc、島国がほとんど。

島国でないと防疫が難しいということですね。

日本では1732年の江戸時代、長崎に発生。

1950年の狂犬病予防法施行による、

飼い犬の登録とワクチン接種の義務化、

そして、正に命がけの徹底した野犬の駆除が功を奏し、

1956年以来、発生はないとされています。

(海外で咬まれ、帰国してから発症、死亡例はあり)

しかし、ペットブームによる輸入動物の増加、

ロシアとの貿易拠点である北海道での犬の不法上陸、

日本各地にある米軍基地内の動物など、

いつ日本に狂犬病が入ってくるか分からない状況でもあります。

台湾の狂犬病パニックは、

決して対岸の火事では済まされないことなのです。

「うちの仔は外に出ないから。」

「うちの仔は人を咬んだりしないから。」

「多頭飼いで、金銭的にワクチン接種する余裕がない。」

「日本にはない病気なんでしょ。」

ということから、

狂犬病ワクチン接種を行っていない方がいらっしゃるようです。

もし、大事な家族dogが狂犬病に感染してしまったら?

感染した上に、身内や他人を咬んでしまって人が亡くなったら?

しまった。遅かった。やっておけばよかった。

では済まされないことです。

狂犬病予防ワクチンは、

人の命を守るための物です。

弱毒化した微生物を接種することで免疫が得られることを発見し、

狂犬病ウイルスの実体をとらえることができなかったにも関わらず、

狂犬病ワクチンを開発した、ルイ・パスツール。

牛乳、ワイン、ビールの腐敗を防ぐ低温殺菌法も開発したそうです。

偉大な功績ですね。

もし、またフランスへ行ける機会があれば、

次こそは、

「Puis-je prendre des photos?(ピュイ ジェ プランドル デ フォト?)」

(日 ; 写真を撮ってもいいですか?)

「犬と闘う少年の像」の前で記念撮影camerashineしなければsmilescissors